やさしい他人

 
アルバイト、辞めると話したらマネージャーさん泣いてた。わ、どーしよ、とか思った。
私より年下だけどしっかり者の、ちょー負けず嫌いでクールなひとなのでびっくり。突然で迷惑かけるのにいろいろ配慮してくれて、あれこれ考えると疲れるからね、と言ってくれた。学童もしばらくお休み、もうすこしで卒業する子がいるのに残念だけど…
 
全身評価が終わるまでは不安だったし、ちょっとかなしくて、もどってこれるかな、なんて、いっしょのボランティアさんにつぶやいてしまったら、すごく困った顔してた。
ときどきハナさんに、妹のようになってしまうのかしら、と訊かれて私もこゆう顔してたんだろな。困らせたいだけのようでもあって、なんて答えていいかいつもわからなかったから。
 
娘や姉には言わないわ、てハナさんは言ってた。
言うても詮ない、わかっていては訊けない。
だけど根拠のない慰めさえ欲しいときはあって訊かないでいられない。
だから、ひとにはやさしい他人が必要だと思う。強がり言わないでいい、あとさき思い煩わずに傷つけることを許して、その場かぎりにちろりとこころを痛めてくれる、やさしい他人。
1人暮らしのハナさんにとって、もし私がそうであったのなら、せめてよかった。
 
 
 
 
検査が済んでこころにあったものを私は言わない。
ハナさんくらいおばーちゃんになれたら、話したくなるかしら??