薬害肝炎


感染の時期は問わないのに、投与の記録があっても先天性疾患だから救済できないって、やっぱり理不尽ですよね…

この法律において「特定C型肝炎ウイルス感染者」とは、特定フィブリノゲン製剤または特定血液凝固第IX因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。第五条二号において同じ。)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内または産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者をいう。


特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法第二条の3

今般、自由民主党議員立法によって、薬害肝炎訴訟への対応を行いつつありますが、もしこうした法律の条文において、私たち先天性凝固異常症患者の感染被害を否定する内容を規定されるとすれば、私たちは到底そうした法律を容認することはできません。


血漿分画製剤のウイルス感染問題に関連する議員立法に対する要望書(2007.12.28)

これらの感染者をもとより排除するような法律の策定により、「薬害肝炎訴訟」をもって代表される肝炎問題の全面的解決とすることは、前文に述べられた「人道的観点から、早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済する」との目的とは著しく離反しており、法の下における公平性にも悖るものであります。また、同時に、これまでの行政と患者との関係性をも大きく覆す内容であり、私たちとして、到底看過し得るところではありません。


「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第IX因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」案に対する意見書(2008.1.7)

【肝炎救済】依然として残る難題‐傷つく薬害エイズ被害者(薬事日報 2008.1.18)


一つは、救済法案が、薬害肝炎訴訟の解決のためという事情がある。それに同訴訟は、確実に国に勝つために、当初から先天性疾患のために血液製剤の投与を受けていた者は「戦略的」(弁護団)に除いていた。先天性患者を含めると勝つことが難しいと判断したからだ。その姿勢が救済法案づくりでも貫かれた。

きびしい裁判、というのはよくわかっていたので「戦略」というのはあるのでしょうし、原告を絞った(線引きした)のは“この裁判”のためには私はしかたがなかったと思っています。「責任」にこだわるのも行政にとって都合のよい認定を警戒しているからだと思いましたし、全員一律というのが原告のためのものでしかなくても、それは、”この裁判”の結果であるのだからそれでいいじゃないのとも思いました。ただ、「現在の司法、行政の枠内で答えが出ないか最後の最後まで苦労した。しかし、できないということになり新しい局面を考えなければこの問題は打開できないと考えた」として作られた特措法ですが、“この裁判”の和解として議員立法という形がよかったのかどうか、わかりません。特措法がなければ、国に過失がないのに薬事行政によって生じた健康被害に金銭補償することになってマズかったりするのかな、でも前文以外は給付手続きのための法律みたいだし、ちょっとわからない。その特措法が、また失望を生んでしまってるのだけれど。

新潟市長が、「薬害肝炎訴訟では司法の決定以上に踏み込んでいる一方、水俣病では最高裁判決よりきびしいハードルを変えられないのは矛盾している」と言われてたのも、つらいなー、です。うう、むずいー

今月から来年度末まで肝炎ウイルス検査が無料化、来年度からインターフェロン治療への公費助成制度が始まりますがHBVの抗ウイルス薬は対象外。肝炎対策基本法案とか特定肝炎対策緊急措置法案とかは継続審議中。これらは、この裁判がきっかけであることはまちがいないことですけれども。



国会で意見を述べた佐野さんの出血大サービス赤札日記より。

参考人質疑が終わって、委員会を傍聴していると、各党質問の後、いきなりこの法案が撤回され、谷垣議員ほかの提案から、委員長提案として法案が再提出された。ここで何が起こったか。法案の文言が一部修正されたのだ。条文で「後天性の傷病」と書かれていたのが「獲得性の傷病」と変えられた。つまり「後天性」という記述では、「先天性」が自然と連想され、先天性疾患をまったく考慮していない、という指摘を恐れて「獲得性」に変更せざるを得なくなったのだ。これはかなり欺瞞的だ。獲得性の対語は「遺伝性」だから、これはこれで大変差別的になる。この再提出の前に、事務局らしき人たちが、忙しく資料を配っていたが、それは修正した法案を配っていたのだ。与党提案から委員長提案に代えたのは、民主党の抵抗を抑える理由もあったらしい。

議員立法法案への意見書の顛末 その1

私たちは、自分たちの感染被害が薬害であると、そもそもまだ世に問うておりません。
私たちは常に血液の問題にさらされており、とりわけHIV感染禍があったなかで、C型肝炎の被害問題に立ち向かうことは、いろいろな意味で極めて難しい状況であります。また、先天性無フィブリノゲン血症の患者は、HIV感染はなかったようですが、患者数が全国で50名弱と極めて少数、しかもその7割近くが女性、組織的活動もできず、孤立している状態です。

議員立法法案への意見書の顛末 その2

「原告の尻馬に乗って、カネをねだりにきたと思われるだけなのではないか」と心配するひともいた。だが、こんな法律が出されるのはやりきれないし、何ともすっきりしないという本音のところを言っておこうと、今回の内容での意見書提出が決まったのだ。実際「カネよこせ」の意見書(要求書)では、23団体も連名が集まらなかっただろうなあというのが、後で出た感想だった。こんな変な法案はいったん廃案にして、ちゃんとした和解交渉をやり直すのが、本来あるべき姿だと思うが、あの状況ではさすがにそれは空論に等しかった。

議員立法法案への意見書の顛末 その3