やさしい他人

 
アルバイト、辞めると話したらマネージャーさん泣いてた。わ、どーしよ、とか思った。
私より年下だけどしっかり者の、ちょー負けず嫌いでクールなひとなのでびっくり。突然で迷惑かけるのにいろいろ配慮してくれて、あれこれ考えると疲れるからね、と言ってくれた。学童もしばらくお休み、もうすこしで卒業する子がいるのに残念だけど…
 
全身評価が終わるまでは不安だったし、ちょっとかなしくて、もどってこれるかな、なんて、いっしょのボランティアさんにつぶやいてしまったら、すごく困った顔してた。
ときどきハナさんに、妹のようになってしまうのかしら、と訊かれて私もこゆう顔してたんだろな。困らせたいだけのようでもあって、なんて答えていいかいつもわからなかったから。
 
娘や姉には言わないわ、てハナさんは言ってた。
言うても詮ない、わかっていては訊けない。
だけど根拠のない慰めさえ欲しいときはあって訊かないでいられない。
だから、ひとにはやさしい他人が必要だと思う。強がり言わないでいい、あとさき思い煩わずに傷つけることを許して、その場かぎりにちろりとこころを痛めてくれる、やさしい他人。
1人暮らしのハナさんにとって、もし私がそうであったのなら、せめてよかった。
 
 
 
 
検査が済んでこころにあったものを私は言わない。
ハナさんくらいおばーちゃんになれたら、話したくなるかしら??
 

手術のまえに

 
まずタキソール。
つぎFEC。順調にいけばここまで6ヶ月。
やっぱりさっぱりハゲちゃうらしい。ぐうう orz
「命と髪の毛、どっちにする??」
冗談ぽく先生がおっしゃるので、髪の毛、と答えておいた。どーせ、まちがってますよ(笑)
天秤に乗せる片方は常に決まっていて迷ってる暇もないみたいなのキュークツで、ふたこと目には「生存率は」て言われるし、ためいきつくとふふっと笑うんだもの××
でも「なにもしないという選択肢もあります」なんて私の嘘は知ってると言いたいかしらん。おいしゃさんにバレないわけがない、ですね。
 
初診から3週間です。あわただしかった。
ふう。これから長いかなあ…
 
 

試合開始のコール忘れて審判は風の匂いにめをとじたまま(穂村弘

 

だれもしらない

 
養護学校の生徒の学童にお手伝いに行ってます。ほんのちょこっとだけど。
自閉症の子どもが1人いて、たいていは決まった場所に座って爪を噛んだりしてる。バランスボールがお気に入りで、奇声を発しながらボールのうえではずむほかは危ないこともしないので手が掛からない、だけどどう接していいかもわかんない。
ときどきは隣に座って名前を呼んでみたり。退屈じゃないかな、とか思ったりもする。*1
言葉は出ないし視線もくれない、しかたないし隣に座ってぼーっとしてたら、ちょこんと手の甲をつっつかれた気がしたのだけど、いったいなんだっただろ意思的かどうかもびみょーだし、ほんの偶然に触れたみたいだけど??とか考えてるうちにぷいと行ってしまう。うー、たしかめてみたかったので少しあとでこんどは私がつっついてみたら同じ動作を返してくれた。
ちょん、と手の甲をつっつく、それだけ。
でもちょっとわかったと思う。「あのね」とか「うん」とか、そゆう感じ??
帰り際も「ばいばい」とつっついてみたら、やっぱりちょんと返してくれた。
 
 
 
 
「私たちは、世界観がちがう」て言われたこと思い出した…
げ、世界観てなんだよって思いながら、傷ついたくせにどこか救われてるみたいな自分がいやだった。そのひとは先天性疾患の患者で、「でもいいんですよ」と言ってた。そうかもしれない、いまでもわからない。
自閉症のゆーちゃんが見ているものを私は見ることができないだろな、と思う。教えてももらえない。だけど、ちょんとつっついてくれて隣に座ってるのを「でもいいんですよ」と言ってくれたみたいで、うれしかったです。
 

*1:だれもしらない』の「あんな子、なにがたのしみで生きてるのやろ」て視線と、そう遠くないんだろなってわかってはいるけれども。とてもおとなしい、なにか服薬していると聞いてるけどそのためかどうかはわかりませんです。

surrogate mother

 
高齢て、母体の危険もそうでしょうけれど子どもに影響ないのかな。
「家族関係が複雑になる」ことを問題視している記事が多い。でも、だからいけないと私は言えないです。けして賛成しているのじゃあないけれども。
 
シンプルで純度の高い関係だから強く囚われて逸脱しようとする者を傷つけすぎる、それなら家族のかたちはもっと複雑になってしまえばいい、彼は、そう言いたかったのじゃないかな…
そうやって変えることできるのか自由になれるのか、わからない。
オトナの都合だけを考えても複雑になればなったでちがうくるしみが生じるだけかもしれない。ここに持ち込む問題ではないのかもしれない、そうだとしても、私には引っ掛かったままになってる、だから。
 
 
 
 
 
オプションは増えて、ひとが、かなわない想いと折り合いのつけ方を探しながら生きていったりしなくても価値観を見直したりしなくても技術とお金がかなえてくれるのを、だめとは言わない止められない。
だけど、それだけでいいとも思わない。勝手なこと言ってるってわかってるけど。
 
 
終バスにふたりは眠る紫の「降ります」ランプに取り囲まれて(穂村弘
 

kidney

 

少なくとも、この「倫理のコスト」・・・この場合は、臓器市場が成立すれば救われたであろう命については正面から受け止めるべきだろうと思います。
Beckerが語る臓器移植論(ふぉーりん・あとにーの憂鬱)

 
提供を増やすためよりもメディカルツーリズムへの対策としてでしょうけれど、謝礼(報酬)についてWHOも検討しはじめているそうです。
 
 
 
 
 
Gift or Merchandise の危うさは薬害エイズのときと同じ。
書いてみようと思ったけれど、むずかしい。