日本人の…

 

憲法は、政府に対する国民一人一人の「権利」を規定する。個人相互のあいだには、今日の社会においては、経済的には商品交換の普遍化(人間の労働が商品として売買されることによって)を通じて、そのかぎりで、商品関係としての平等関係──したがって「権利」関係──が実質的にも成立しているが、政治権力と国民との間には、このような実質的な平等関係は存在しない。したがって、憲法において政府と国民との関係が「権利」の関係として規定されているということが、単なるイデオロギーの宣言以上に現実的なものとなるかどうかは、種々の条件にかかると言わなければならない。憲法および憲法にもとづく種々の法律は、立法権・行政権・裁判権のそれぞれについて、国民による直接または間接のコントロールを規定するが、それらのすべてによっても、憲法上の国民の権利を保障するのに十分であるという必然性はない。またすべてを政府権力の自制心に依存するということは、事実上の力の弱者が事実上の強者の優越した力に依存することを意味し、「権利」を規定するという憲法の根本の趣旨に矛盾する。

日本人の法意識 (岩波新書 青版A-43)

 
裁判員制度が始まるなーとか思いながら読みました。
40年前の講座が元に書かれた本なので、ずっと変わっているはずとは思うけれども、権利ばかり主張するのは美しくない、ばかり言われていると、また戻ってしまうのじゃないかと思ったりしました。